2013年1月18日(金) Myth

Myth01
19:00-23:00
1500yen(inc 1drink)

Myth 神話
阿木 譲 ( AGI Yuzuru )
「古き北欧における未来の展望は、冷たく荒涼としたものであった。同じく北欧神話においても、世界の終末像は不毛かつ悲観的である。それは、北欧の神々がユグドラシルの他の枝に住む者に打ち負かされる可能性があるということだけでなく、実際には彼らは敗北する運命にあり、このことを知りながら常に生きていたという点にも表れている」。
3.11以後周囲を見回すと、穏やかなひとと、その愛の結晶である子供と、ささやかな贅沢と、波風のたたない幸せで凡庸な家庭生活、まるでぼくがすべて拒否してきたものへの、巻戻しのような現象が2013年になって起こっている。北欧神話の光の神であるバルドルの死から世界の終末が始まるといわれている終局(終末論信仰)への序曲がもう始まったというのに。バルドルの遺体が葬いのための船の上に置かれる前、オージンがバルドルの耳元で何をささやいたのか?
我々にはさまざまな感情も交えた物語や幻想の思考による満足のいく神話論がない。
あるのは「私の中に世界がある」セカイ系か、「世界は自分の眼に見えたままに存在している」素朴実在論だけ。だけど北欧神話が預言しているように、リアルな現実に背中を向けて欲望充足的妄想のなかでオタクとして生きても、最終的にはその妄想は破綻することが運命づけられている。
北欧神話では、神々と世界は破滅するが廃墟からより良き新しい世界が出現するというのと、新たな世界が生まれることなく世界が滅亡するという2つの説がある。いま音楽のテレオノミーはどこに向かおうとしているのか?

Hildur Guðnadóttir – Erupting Light

http://www.youtube.com/watch?v=eQcy9mkZu4A

尖端音楽での救世主信仰、メシアニズムは言うまでもなくイーストロンドンからのサウンド+ヴィジュアルを集合的にコレクティヴするダブステップ・レーベルDeep Medi Musikからギター、ピアノ、バイオリンによるインストルメンタル曲中心のサウンド神話を展開するOld Apparatusや、インダストリアルパーカッションとモダン・ミニマルとの融合ともいえるドイツ、ミュンヘンのPrologueから「Sharmans Path」をリリースしたDino Sabatini、Black Ever Black、Modern Love、Typeからも作品をリリースし中東的→ゴシック→インダストリアル神話を横断するDominik FernowのVatican Shadow、ホラー神話、そしてペンデルの魔女Elizabeth Southernをそのままユニット名にしたDemdike Stareなどの音楽によって始められた。

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そしてポストロックとしてのモダンクラシカルも熟し始めている。アイスランドのチェロ奏者Hildur Gudnadottirは、北欧の信仰や世界観が反映されているかのような、哀愁的で、薄暗く、ほとんど冬の不可解な風景画を塗るようなサウンドスケープを持っている。豊かで憂鬱な音楽のタペストリーとも評されている。彼女の目的はアルバム全体にわたって「空および雲状の感覚を作る」ことで、これもまた一種の終末論的態度といえるだろう。その小さな水滴の集まった雲状の哀しいチェロの振動音は、それはときには雷雲に変化してダイナミックな響きをも奏でる。

Hildur Guðnadóttir – Erupting Light
from Rachel Brandon 1 year ago
Hildur Guðnadóttir performs Erupting Light live at the Adam Art Gallery, Wellington.
http://vimeo.com/28249175

Hildur Guðnadóttir – Earbraces
http://www.youtube.com/watch?v=uupFJe1nxV8

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Old Apparatus ‘Mernom’

http://www.youtube.com/watch?v=hN5z_L9TNZo&feature=share&list=PLXRop8A4FQS_9qEOL9pzDDikoYApTw4vL

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Yggdrasill si cosmologia vechilor germani
http://www.youtube.com/watch?v=9ilXLciSUnM

Dino Sabatini | White Witch [Prologue 2012]
http://www.youtube.com/watch?v=kshmFsWlr-s

bricolage:
AGI Yuzuru ( 阿木 譲 )
agi
評論家 / 編集者 / プロデューサー
1976年に「ロックマガジン」を創刊する。「ロックは掃除機、ロックはスポンジ」というコンセプトが理解されることなく、その後に発行された「EGO」でロックへの決別を表明する。
そして1990年にアシッドハウス等について書かれた「E」以降はエレクトロニックミュージックに傾倒し、1999年に発行された「Infra」、「Bit」ではフューチャージャズ、クラブジャズ、ジャズに傾倒する。
現在、紙媒体での露出はないが、自身のレーベル「remodel」より関西若手エレクトロニックミュージシャンを主に置いた「a sign」、2012年3/9のオープニングイベントで壮絶なサウンドスケープをうみ出したことも記憶に新しいSvrecaが主宰するスペインのレーベル「Semantica」の未発表音源を集めた「PROLOGUE : SEMANTICA RECORDS COMPILATION」、2012年9月にはUKの重要レーベルCherry Red/Creation等から作品をリリースし、そのファンタジックな世界感が高い評価を受けるMomusによるコンセプトアルバム「In Samoa」をリリース。Momusにとって1つの転機となる作品となり、話題を呼ぶ。

多方面に影響を与えていたブログは現在閉鎖し、自身のイベント「encode」の入場者限定で配布される冊子でのみ尖端音楽を紹介する。

氏の姿勢として一貫しているものは、絶えず新しい音楽を求め、モダンであろうとすることだろう。
運動体である音楽を遡って見た時に、氏が紹介 / プロデュースしてきた音楽が物事の本質、音楽の潮流を外れることなく、リードし続けてきたということは驚くほかない。

自身から明言はしないものの、音楽を通じて「生きること」ということを問い、表現しているように思う。

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